アマゾン化する未来 ベゾノミクスが世界を埋め尽くす の書評 

アマゾン化する未来 ベゾノミクスが世界を埋め尽くす の書評 

「アマゾン化する未来 べぞのミクスが世界を埋め尽くす」を読んだので、そのあらすじと学んだことを記録します。

この本の内容は、Amazonを題材に、今後は

①Amazonが成功したAIフライホイールを回していくビジネスモデル(ベゾノミクス)

が増え(○○界のAmazonのような)、既存のビジネスを侵食していくだろうと予測。

それに対抗する手段として

②ベゾノミクスが不得意な分野を攻める4つの方法

を紹介しています。

Amazonを題材にしており、様々な具体例とそれへの対抗する企業、が示されています。

内容の結論

この本の内容は、この下の図の通りです(笑)

赤字の部分が追記した部分ですが、言いたいことは、れらの赤字の施策によってフライホイールがどんどん早く回っていくことです

フライホイールが回れば回るほど、顧客体験が向上し、より多くの顧客を惹きつけ、それが売り場を求める小売り業者を惹きつけ、小売業者が増えると、選択肢が増えるので、

更に顧客体験が上がる、といったサイクルです。

これが赤字の施策によってさらに、回転し、顧客体験が上がっていきます。

上記の図は、CEOのジェフ・ベゾスは紙ナプキンに書いたビジネスモデルを参考にして作りました。

ベゾスのビジネスモデル
出典:https://www.amazon.jobs/jp/landing_pages/about-amazon

以降では、図の赤字の部分について説明していきます。

知りたい部分だけ読んでいただければと思います。

ベゾノミクス(AIフライホイール)の各部について

Day Oneという文化

Day Onerとはアマゾンが常に、新しいビジネスを始めた1日目(Day One)のスタートアップのように行動するように熱をもっている、ということです。

そのくらいリスクをとって熱気を持って、大企業特有の官僚化を防ぐということでしょう。

「CEOよりもデータを持つものが強い」と言う評価基準もそれに貢献していると思われます。

Sチームとシャドー制度

ベゾスの周囲には「Sチーム」という長期間Amazonに働いている、ベゾスの考え方や価値観を理解している幹部が18人います。

また、その中からさらにシャドーという2年間ベゾスに付き添って行動する付き人のような制度もあります。

彼らがベゾスの価値観を理解していることも文化を保つことに貢献していると考えられます。

また、ベゾスが社長を退任した後もビジネスを成長できるようにしているようです。

AIによる分析

Amazonでは3億人の買い物客が何を購入しているかに関するでーたを持っているので、これがEコマースにおける大きなアドバンテージになっています。

また、他のプライムサービスで取れるデータも同様でしょう。

そのデータを分析する人を確保することも大事ですが。それが米国のコンピューターサイエンス専攻卒の初任給が1千万を超える理由でもあるでしょう。

生活のOS化

Amazonは、「アップルのiOSやグーグルのアンドロイドよりも普及した、新しいOSをつくること」に取り組んでいます。

具体的には、買い物はAmazon、部屋の照明や空調をAlexaで、など生活の広い範囲でAmazonのサービスが組み込まれるようにして、生活のためのOSとなろうとしています。

ちょっと恐ろしいですが、私はそうなりつつあります(笑)

更に言えば、AWSを使っている企業はこんなにあるのでAmazonを使わない生活はもう難しかったりします。

雑談ですが、Amazonの本社の1つを政治の中枢ワシントンDCに立てているんですよね。政府とも関係が深いです。

プライム○○

「プライムとは本質的に、消費者の買い物パターンを変えるための手段であり、ネットでたまに買い物をする人をアマゾンのエコシステム〔生態系〕の中に閉じ込め、アマゾンを頻繁に利用する人に変えるためのもの」とAmazonの幹部は言っています。生活のOSとなる手段ですね。

買い物やクラウドへの写真のアップロード、プライムビデオ、プライムミュージックなどなど、顧客との接点を上げることで、Amazonの利用を促します。

プライム会員になると、非会員と比べて利用額が約二倍(年間700ドルが年間1300ドルになる)になるそうです。

面白いのがAmazon制作のオリジナルドラマの損益の話です。

ドラマの制作費よりも、その作品目当ての新規プライム会員の増加による、年会費収入の方が上回れば、制作をつづけ、

制作費>年会費収入となれば制作を打ち切る。

当たり前と言えば当たり前ですが、私が好きなドラマのシリーズが打ち切りになったのもこれのせいなんだなと妙に納得しました。

Alexa

上記のように生活のOSになるための1つの手段がAlexaです。

Alexaは世界80か国以上で毎日平均5億件(2019年)の質問に答えています。

また、Amazonはアレクサの開発に約1万人!の社員を充てています。(投資会社のループベンチャーズの調査によるとAmazonや他ハイテク企業は年間の研究開発費の10%を音声認識に費やしているそうです。)

かなりのリソースを費やしていることからも分かる通り、本気です。

中国の業者との競争

既存の小売業者は中国の業者と熾烈な競争に巻き込まれています。

2018年の時点でAmazon上の小売業者の約3分の1が中国人で、トップ10小売業者のうち4人が中国人です。

競争により良い商品が生まれることもありますが、他の業者のアカウントを乗っ取る、大量注文して返品する、レビューを捏造するなどの、悪質な嫌がらせ行為も生まれています。

専用の船便

Amazonは製品を中国から米国まで運ぶ「ドラゴンボート」という専用配送サービスを提供しています。

これは、米国内の小売業者が運送サービスに支払う料金より安いとのことです。

アリババと対抗するための策ではあるようですが、欧米の小売業者は失望させています。

それでもAmazonで欧米の小売業者が売り続けるのは、Eコマースのシェアの4割近くをAmazonが占めるからでしょう。

Amazonの融資

Amazonは、小規模小売業者に「アマゾン・レンディング」というローンを提供しています。

融資のリスクは高いですが、企業の売上成長率や在庫回転率、製品の評価をリアルタイムでAmazonは把握できます。

これをアルゴリズムで評価して融資するかしないかを決定しているようです。

銀行のように面談や大量の書類は必要ありませんが、アルゴリズムの評価次第で突然融資が受けられなくなることもあるようで、一長一短があるなと思いました。

Amazonからすると、小規模事業者が資金を得て、品揃えが広がると、それがより多くの顧客を惹きつけ、更には、他の小売業者も惹きつけることになるので、良いサイクルが回る魅力的なものです。

 

Amazonに対処する方法

本書では、Amazonに対処する基本4原則というものを紹介しています。

①デジタル技術によるオンラインとオフライン双方での最高の顧客体験の融合

②そこでしか買えない厳選された商品の提供

③テクノロジーへの積極的な投資(ソーシャルメディアの駆使をふくむ)

④顧客が安心して買い物ができる環境の提供による社会的使命の追求

簡単に説明します。

①デジタル技術によるオンラインとオフライン双方での最高の顧客体験の融合

体験型小売店と言えますが、その代表例としてナイキを挙げています。

②そこでしか買えない厳選された商品の提供

Amazonは一般的な商品を欲しい時に欲しい場所で提供する公共事業的な存在です。なので、ブランドを確立することが難しいです。

その例として高級腕時計を購入することが挙げられています。Amazonで買うよりも店舗や、そのブランドの公式ショップで買う方が、満足度が高いでしょうし、納得です。

③テクノロジーへの積極的な投資(ソーシャルメディアの駆使をふくむ)

時代の移り変わりに合わせて、顧客がもっとも訪れる場所・メディアに、小売業者自身が出ていき、自社製品を買ってもらえるようにする、ということです。

④顧客が安心して買い物ができる環境の提供による社会的使命の追求

Amazonは社会・環境問題における評判を高めようとしていますが、その評価はまだ確立されていないので、そこを攻めるということです。

(サステナビリティ・社会貢献など)

まとめ・まなび

Amazonはデータを駆使して、顧客体験がどんどん向上するようなサイクルを回しています。

それは、自分がサービスを作る時にも、仕組みとして意識すべきことだなと思いました。

その一方で、公共インフラになりつつあるAmazonは万人受けを狙うプラットフォームなので、差別化して対抗する方法もある、ということを学びました。

明日の自分に生かすとしたら、自分の提供価値を上げていくために、どんなサイクルを回せばどんどん提供価値が上がっていくか、

それを意識することかな、と思いました。

厚めの本ではありますが、様々な事例や施策が載っているので、それを読むだけでも価値があるかなと思いました!